『WIN』金桂元インタビュー（２）

そうです。金載圭が私を陥れたとは思いません。私が信じている分だけ、金載圭も私を信じてついて来たのです。万一金載圭が犯行を事前に計画していたとしたら事件現場で私を殺していたでしょう。私が生きていること自体が、彼の偶発的な犯行であるという証なのです。

金載圭が事前に犯行を計画していたら、私の存在を考慮しない筈がありません。私に事前に相談した上で、同意しなかったら私を殺すなり捕らえるなりしていたでしょう。

例を挙げてみましょう。

金載圭は事を起こす前に晩餐会場から50mほど離れた本館まで行って、２階にある自分の執務室に隠してあった拳銃を取って来ました。

もしこれが計画的犯行であったとするなら、晩餐会場の上が彼の事務室なのに、なぜそこに銃を隠しておかなかったのでしょうか。宮井洞安家クンジョンドンアンガ自体が中央情報部の管轄下にあって、特にそこの事務室は情報部長以外誰も入れない治外法権の場所だったんですよ。その上、事前に計画していたら晩餐会場のすぐ隣りに警護員たちを留めるようにした理由がありません。どんな口実を設けても他の場所に移させたはずです。

その日の夜、金載圭は朴大統領から特に激しく叱責を受けました。車智澈チャジチョルに至っては、金載圭の不手際をことごとく吊るし上げて、朴大統領は車智澈の方にばかり味方していました。それで金載圭は犯行を決心したようです。

朴善浩ら腹心の部下にさえ、事を起こす30分前に初めて指示を与えたこと自体が偶発的犯行である証拠ではありませんか。

弁護士を通じて後から聞いた話ですが、金載圭の陳述は逮捕されて二日後から変わり始めたと言われています。車智澈に対する私怨で犯行に及んだという話が後になって変わったようです。どうせ死ぬなら男らしく死にたいと考えたのかもしれません。後になってから民主革命のためにという話にまで発展したのです。国民に対して自身の行動を、そのように広めたかったのかもしれません。

ええ、その時の状況を知っていれば私の言うことを理解できるでしょう。金載圭が興奮したのもやむを得ません。

車智澈と金載圭は時々、朴大統領の前で激しい口論を交わしていました。そういう時は大統領が出ていって、「やめないか」と制止していたものです。ところが、その日はどういうわけか大統領は車智澈の肩ばかり持っていました。私はたびたび話題を変えるなどして口論が酷くならないように努めましたが、結局どうしても政治の話に戻ってしまうのです。そうなると車智澈が情報部の不手際を責める発言をした上に、朴大統領は金載圭の自尊心に触れるような叱責をしました。私自身も「今日は本当に度を越している」という気がしました。金載圭が人間的な屈辱を感じるほどだったのです。今振り返ってみても、何故あの方がそうされたのか分からない。

その最中に金載圭が激昂し、外に出て拳銃を持って来て事に及んだのです。

民主化を叫ぶ方々の立場上、それは当然でしょうね。金載圭を大儀名分を持った革命家に祭り上げたいのです。金載圭の犯行を擁護して正当化するためには、事前に計画された挙事でなければいけませんからね。